Q 当社はこのたび、従業員が起こした事故の慰謝料を負担します。この場合には、源泉徴収が必要ですか。
A その事故が、@会社の業務と関係ないものである場合、またはA従業員の故意又は重過失によるものである場合には、源泉徴収が必要です。
会社が、従業員の起こした交通事故などに基因する治療費や慰謝料(損害賠償金等といいます)を負担する場合がありますが、その場合に受ける従業員の経済的利益については、その事故が業務上のものかどうか、従業員に故意又は過失がなかったかによって次のように取扱いが定められています。
なお、この場合の損害賠償金等には、慰謝料、示談金など他人に与えた損害を補てんするために支出するすべてのもの及びこれに関連する弁護士の報酬等が含まれます。
損害賠償金等の支払の基因となった事故が、次のものであるときはその事故を起こした従業員が受ける経済的利益はないものとされています。したがって、この場合には所得税の源泉徴収の問題は発生しません。
これに対して、@従業員の起こした事故が、会社の業務と関係ないものであるときや、Aその事故を起こした従業員の故意又は重過失によるものであるときは、会社が負担する損害賠償金等は、その事故を起こした従業員に対する給与とされます。したがってこの場合には、源泉徴収が必要になります。
ただし、会社が負担した金額のうちに、その事故を起こした従業員の支払能力や会社としての社会的、道義的責任等の観点からみて、その従業員に損害賠償金等を負担させることができないため、会社がやむを得ず負担したと認められる部分の金額がある場合には、その部分の金額については経済的利益はないものとして取り扱われますので、その部分については、源泉徴収する必要はありません。
なお、従業員が事故に基因して会社を休んだ場合に、会社が給与に代えて休業補償金などを支給するときは次のように取り扱われます。
@業務上の事故である場合
労働基準法に定める災害保障の規定により支払いを受ける療養の給付もしくは費用、休業補償、障害補償、打切補償又は分割補償は、所得税が課税されないこととされています。したがって、その休業補償金が、業務上の事故が原因で就労できず、賃金が支給されない場合に支払われるものであるときは、源泉徴収の必要はありません。
A@以外の場合
その休業補償金が業務上でない事故による休業を補償するものであったり、業務上の事故による休業を補償するものであっても、就業できない期間を有給扱いとしてその間の賃金を休業補償金名義で支払うというような場合は、給与として課税されますので、この場合には源泉徴収が必要になります。
会社が、従業員に対して支給する見舞金品など(入院見舞、災害見舞など)は、その金額が見舞金品などとして社会通念上相当である限り、給与として課税されることはありません。