Q 当社は、このたび支店の開設に際し、従業員の何人かに転勤を命じました。これにかかる転勤費用は会社負担としますが、源泉徴収は必要ですか。
A 転勤費用が、その転任に伴って支出されるものであり、通常必要と認められるものであれば、源泉徴収の必要はありません。
会社が従業員に転勤を命じ、その転勤のために必要な費用を会社が負担するといったことは一般的によく行われていますが、こうした転勤に伴い従業員が受ける金品については、その金品がその転任に伴う転居のための旅行に通常必要な支出(引越し費用等)に充てるために支給されるもので、その旅行に通常必要と認められるものについては、所得税法上、非課税として取り扱われています。
この場合の非課税となる金品とは、その旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路、もしくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのですが、その範囲内の金品に該当するかどうかの判断にあたっては、次の事項を勘案して判定されます。
@その支給額が、その支給をする従業員等のすべてを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
Aその支給額が、その支給をする従業員等と同業種、同規模の他の従業員等が一般的に支給している金額に照らして相当として認められるものであるかどうか。
したがって、転勤に通常必要であると認められる金額を超えて支給された部分の金額や転勤の実体の有無にかかわらず支給されたものについては、給与等となりますので、源泉徴収が必要になります。
なお、転勤に伴い従業員が借家する必要が生じ、その借家のための権利金や仲介手数料を会社が負担するという場合がありますが、これらの費用については、転任に伴って支出する費用ですが、通常の生活に必要な支出に充てられるものを負担するのであり、旅行に通常必要な費用の支出に充てられるものではありませんので、非課税とはならず、給与として課税されることとなります。 したがって、このような費用を会社が負担する場合には、源泉徴収が必要になります。
また、転勤に伴い従業員の子供の転校費用を会社が負担するという場合のその費用も、通常の生活に必要な費用の負担であって、旅行に通常必要な費用の支出とは認められませんので、給与としての源泉徴収が必要になります。
また、転勤先の新任地に住宅がないため、やむをえず一時、家族を旧任地に残して別居し、単身赴任等する場合に会社が特別赴任料、着任後滞在費等の名目等で金品を支給する場合には、それが旅費規定に基づいて支給されるものであっても、給与等として源泉徴収しなければなりません。
ちなみに、単身赴任者が職務遂行上必要な出張に付随して帰省した場合に支給される旅費については、その旅行の目的、行路等からみて、その旅行が主として業務遂行上必要な旅行と認められ、かつ、その旅費の額が非課税とされる旅費の範囲を著しく逸脱していない限り、非課税として取り扱われます