Q 本店に10年勤務し、その後海外支店で5年勤務していた社員が、退職することになり、退職金を支払うこととなりました。この場合の源泉徴収はどのようにすればいいのですか。
A 国内源泉所得ついて20%の税率による源泉徴収をすることになります。ただし、非居住者は、本人の選択により居住者と同様の課税を受けることもできます。
所得税では、海外支店等の勤務で継続して1年以上国外に居住する者は、非居住者として取り扱われ、非居住者に支払う退職手当等は、その非居住者が居住者であった期間の勤務に対応する部分について20%の税率により所得税を源泉徴収しなければならないとされています。
したがって、その退職手当等が居住者としての勤務期間と非居住者としての勤務期間とを合算した期間に対して支払われるものである場合には、その退職手当等の額を居住者であった期間に対応する部分と非居住者であった期間に対応する部分とに按分して、課税対象となる金額を算定しなければなりません。按分は、次の算式により行います。
課税対象となる退職手当等の額(20%) =退職手当等の額×(A)のうち居住者だった期間÷退職手当等の計算の基礎となった期間(A)
源泉徴収する金額は、課税対象となる退職手当等の額に20%を乗じた金額となります。
源泉徴収する額=課税対象となる退職手当等の額(B)×20%
ただし、非居住者が本人の選択により、今回の退職に基づいてその年中に支払われる退職手当の総額を居住者が受けたものとみなして、居住者と同様の課税を受けるということも認められています。
この特例は、国外勤務等をして退職する者と国外勤務をせず国内勤務だけで退職する者との税負担が不公平にならないようにと設けられている制度で「退職所得についての選択課税」といわれているものです。
非居住者が、「退職所得についての選択課税」を受ける場合には、次のような取扱いをします。
@会社の取扱い
会社は、非居住者が「退職所得についての選択課税」の適用を受ける場合であっても、退職手当等を支給する際には、さきに算式により計算した20%の所得税を源泉徴収し、これを納付しておかなければなりません。
A非居住者の取扱い
非居住者が「退職所得についての選択課税」の適用を受けようとする場合は、その退職手当等の支給を受けた翌年1月1日(その日までに、その年中の退職所得の総額が確定したときは、その確定した日)以後に、税務署長に対して所得税の確定申告書を提出し、すでに源泉徴収された税額との差額を還付してもらう手続きが必要です。