Q 当社は、60歳を定年とし、希望者については3年間の再雇用契約を結んでいます。定年時に支払う退職金は、退職所得として源泉徴収すればいいのでしょうか。
A 一定の場合には、退職所得として源泉徴収します。
退職手当等とは、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与をいいます。したがって、退職に際し、または退職後に会社から支払われる給与で、その支払基準等からみて、他の引き続き勤務している従業員に支払われる賞与等と同じ性質であると認められるようなものは、退職手当等には該当しません。
すなわち、一時に支払われる給与のうち退職に基因するものは、原則、退職手当等に該当するわけですが、退職という事実がない場合であっても、退職手当等として取り扱われる給与もあります。たとえば、定年に達した従業員を再雇用する際に支払われる定年時退職金等がこれに該当しますが、この場合には、定年時退職金等が支払われた後において支払われる退職金等の計算上、その定年時退職金等の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しないとされている必要があります。
つまり、再雇用者については、将来、実際に退職する際に再度退職金等が支給されるかもわかりませんが、そのときには、定年時退職金等の計算の基礎となった勤続期間を含めないとしている場合に限り、定年時に支払われる退職金等は、退職手当等として取り扱われるということです。
したがって、この条件を満たす定年時退職金等については、退職所得としての源泉徴収が必要になります。
また、労働協約等が改定され、定年が延長となった場合において、その延長前の定年に達した従業員に対して、旧定年に達する前の勤続期間にかかる退職金等が打切支給されるときも、再雇用者に支給する退職金等と同様の取り扱いがされます。すなわち、将来、実際に退職する際に支給される退職金等が、旧定年時までの勤続期間を一切加味せず計算されるものである場合には、旧定年時に支給される退職金等は、退職手当等として取り扱われ、この場合には退職所得としての源泉徴収が必要になります。
ただし、この取り扱いは、会社が現実に退職金等を支給した場合に適用されるものですから、打切支給したこととして未払金に計上した場合には適用がありません。
したがって、源泉徴収は、実際に退職金等を支給した場合に限り、必要となります。
なお、定年到達時には退職手当等の支給をせず、実際に退職する際に退職手当等を支給するような場合は、その支給日に、実際の退職日まで引き続き勤務していたとした場合における退職所得に対する所得税額を源泉徴収しなければなりません。